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すし屋の異常な愛情  by ボンボンママ  2005/10/29

これはカルマについての話です。
健全な愛犬家は、この先をけっして読まないで下さい。
必ずムカつきます。


先日、「寿司仁義」の土佐犬、次郎を抱かせてもらった。
私の土佐犬初体験は次郎だ。←「Bまでいった。」
そして不肖ボンママ、抱いたとたん次郎に惚れましたね。
実にらしい。
男の中の男という礼賛があるが、生後40日にして、次郎は犬の中の犬という風格があった。



あれは何年前のことか・・・。
深夜、仔犬の泣き声が闇夜を裂いた。
母親を探す切ない声だ。泣き声は執拗に続いた。
私はたまらずガウンを引っ掛けると外へ出た。
近くなのは間違いない。仔犬は寒さと飢えで切ないのだ。
家の周囲を歩き廻っているうち、泣き声がピタッと止んだ。
今日でもう8日目。「あんなに泣かせるなんていったいどこのどいつだ
私は怒髪天で頭から湯気をモウモウ立てながら、家に戻った。
そんなことを繰り返しているうち、いつしか仔犬の泣き声はしなくなった。

それから暫くたったある日。
道路を渡って家に戻ろうとしたとき、陽気な犬の声が響いた。
声の主を捜してキョロキョロしていると、並びのすし屋「寿司仁義」から
大将が出てきて裏木戸を開けて入って行った。
戸の隙間からチラッと見えたのは、短毛の大きな犬であった。
あれが噂の土佐犬かぁ
アバウトで陽気な気質らしく、ブンブン尻尾を振っていた。
私は勝手にこの土佐犬をコング大佐と名づけた。
S・キューブリック監督の大傑作、「博士の異常な愛情」で、
最後に水爆にまたがって落下していったコング大佐にそっくりの面構えだったからだ。

寿司仁義」は町内屈指の愛犬家で、バリバリの土佐犬マニアだ。
「日本土佐犬連合会」の長年の会員であり、本宅から10分程の別宅には犬専用の屋敷がある。
贔屓の魚屋の情報によると、毎朝マグロの頭を仕入れて、愛犬のエサにしているのだという。
マグロの頭にかぶりつく闘犬
ラサアプソ・ジャパンの「犬めしシリーズ」に登場していただきたいものだ。
寿司仁義」の大将は小柄だが、犬に負けない闘魂の持ち主だ。
坊主頭に眼光鋭く、亡き義母に言わせると「あんなヤクザがかかった男!」とののしられるほどアブナイ印象だ。
当然、喧嘩も強い。
先日も「寿司仁義」の看板をぶっ飛ばし、我が家の前の電柱に車で激突した
酔っ払い運転のヤンキー3人をまとめてボコボコにしてしまった。
大将の握る寿司はデカイ。
客を犬と思っているのか5個も食べれば腹いっぱいになってしまう。おまけにマズイ。
ネタも飯もいいのだが、握りのバランスが最悪なのだ。
にもかかわらず、毎年ボンボンママ家が「寿司仁義」で忘年会をするのは、寿司以外のものが美味いからだ。
寒ブリは日本海の香りが口中に弾け、鮟鱇の肝や鱈の白子はとろけて淡雪となる。
カニの鋳込み揚げは、サクっと噛んだとたんにカニ味噌が溢れてきて、もうたまらん美味さだ。
アラカルトの仕込みは若大将。若大将は関取のような大男だ。
そして女将は、義母に言わせると「あんなヤクザがかかった男にもったいない!」ほどの美貌。
こんな美人からどうしてデブ大将が生まれたのか、町内の七不思議と言われている。
「寿司仁義」とはよく犬談義をした。
マグロの頭と一緒にエサにするつもりか、「別宅に遊びに来なさい。」と大将の誘いも受けていた。
個人的にマスチフ系は好みであったが、ただ会いに行く機会がなかった。

なぜかわからないが、「寿司仁義」ではコング大佐を人前から隠して育てていた。
その不細工なお姿を見られるのは、女将や大将が裏木戸から出入りしている偶然に、出くわした時以外にない。
「もうかわいくて、かわいくて
ボンボンママ家に、回覧板を持ってきた女将が答えた。
コング大佐の話になると、愛犬家らしくとろけそうな笑顔になった。
女将の趣味は男も犬も首尾一貫している。不細工系だ。
そしてこの時やっと、深夜に響いたあの仔犬の泣き声がコング大佐であることが判明。
聞けば、出産直後からコング母が仔犬を食べてしまったのだという。
結果、8頭出産し生き残ったのは2頭だけ。
「もうお父さんとふたりで、2時間おきにミルクを飲ませたのよ。
飲めば出すでしょう。だからコットンで、シッシをオチョンチョンして、寒くないようにオクルミに入れて。」
女将は美貌を上気させ、子育ての苦労話をしてくれた。
土佐犬でも生まれたての仔犬は無力だ。
目も開かず、排泄もできない2頭の仔犬。
注ぎ込んだ労力が大きいほど愛情は増大したであろう。

月日が経った秋晴れの日。
「寿司仁義」の女将とばったり出くわした。
「そういえば最近見かけませんが、コング大佐元気ですか?」
私の何気な一言に、女将の瞳が曇った。
「あのね・・・」女将はため息と共につぶやいた。
「この間・・死んだの・・・。」
「オー・マイ・ゴッド?!」
女将の黒い瞳にみるみる涙が溢れた。
「闘犬大会の若犬部門に出場させたら、相手に首を噛まれて。」
コング大佐。享年1才。噛まれた箇所から菌が入り、感染症で死亡。
私は絶句したまま言葉もなかった。
女将は涙声でつぶやいた。
「本当に・・自分の子供のようにかわいがって育てたのよ・・。」
「それは・・・大将もさぞ気落ちされているでしょう。」
こらえ切れなくなったのか、女将はハンカチで口元を押さえた。
「お父さん。お前のせいだって。」
「お前が甘やかしすぎたから、根性なしの負け犬になったんだって・・。」
そう漏らすと涙をぬぐった。

次郎の母親は出産3日目にして、乳腺腫瘍で死んだ。
仔犬たちは8頭のうち6頭が死亡。次郎と太郎だけが生き残った。
土佐犬の仔犬の生存率は低い。
母親が無意識に巨体で押しつぶす、
あるいは最適者生存説に添って、か弱い個体を排除して育てないといったケースが多い。
またコング母のように、精神的に未熟な場合は子殺しもあるのだ。
手塩にかけて育てられた次郎、太郎兄弟はこれから別の犬舎へ預けられ、
闘犬としての修行を積み、再び寿司仁義に戻ってから、デビュー戦へ挑むのである。
私は次郎の温かいぬくもりを胸に、その耳元にささやいた。
We'll Meet Again ♪ 
また会いましょうと。




クルエラが子供の頃、近所に土佐犬を散歩させている男性がいました。
たぶん、背中には和風のタトゥーが施されていたとおぼしき男性です。
その男の腰に巻かれていた太い縄に繋がれて、のしのしと歩く土佐犬は、
子供だったクルエラの目には、巨大で恐ろしい怪物のように見えました。

また、クルエラは子供の頃一度だけ犬に追いかけられ、泣きながら逃げ回った記憶があります。
大人になるまで、その犬は土佐犬だと思い込んでいましたが、
考えてみれば、土佐犬がノーリードにされているはずもなく、
きっと、そこら辺を歩いている野良犬に追いかけられたのが関の山でしょう。
そんなこんなで土佐犬は、クルエラにとってどこか怖い犬と言った印象がありました。
もちろん、闘犬だし。

がっ!仔犬の次郎の何と可愛いこと!!
広い胸に太い足、泥棒面に額の皺。
文句無しに可愛い。
だけど、こんなに可愛い次郎もいつかは闘犬になるのですね。
どうせ闘犬になるなら、横綱に…。そして生き残れ
横綱になり再びボンママと出会う時、ボンママは次郎のタニマチとなって
西陣の化粧回しをプレゼントしてくれるかもしれません。
しかし、化粧回しにはラサアプソが刺繍されている可能性有りです。

それにしても、「寿司仁義」というネーミングはあっぱれです。
そりゃ、土佐犬飼うしかないでしょう。
チワワ飼ってたら、クルエラ怒りますって。

by クルエラ